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2018年2月11日日曜日

【エフェクター】Flying Teapot Jubilee Preamp

歪み量★★★★☆
音作りの幅★★★★★
コストパフォーマンス★★★☆☆
オススメ度★★★★☆

59 preamp(以下59)に続き、より歪むマーシャル系のプリアンプとしてFlying TeapotからJubilee Preamp(以下JP)が1月末にリリースされました。
無事購入したのでレビューがてら紹介したいと思います。

JPはマーシャルのシルバージュビリーというアンプを再現したプリアンプペダルです。
シルバージュビリーとはなんぞや?というと、JCM800をベースとし、よりきめ細やかな歪みと芳醇なローを獲得、また出力を50Wと100Wに切替可能としたことで擬似的に2chのアンプとして使用できるようになったアンプです。
ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュや、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテが使用していたことで有名で、現在でもリイシュー版が発売されているほどです。
当時のモデルはプレミアが付いており、なかなか市場に出回ることがないためマーシャルの割には非常に高値で取引されています。

で、このJPはフットスイッチによりクランチchとリードchを切り替えることができます。
シルバージュビリーでいうところの100Wと50Wの切り替えですね。
(訂正:Flying Teapotさまより仕様についてご指摘がありました。”フットスイッチでのチャンネル切り替えはワット数の切り替えではなく、実機に付いているアウトプットマスターのプッシュプルスイッチを使用した時のチャンネル切り替えをシミュレートしています。”とのことです。)
フットスイッチがチャンネル切り替えということは、59と同じように常時ONとなるタイプのプリアンプということです。
これは製品コンセプトとしてエフェクターではなく完全なプリアンプとして使うことを想定しているためですので、ON/OFFを切り替えたい場合はループスイッチャーなどを使用してください。

クランチchでは59と同程度の歪みを得ることができます。
こちらはINPUT GAINのみで歪み量を決めますので、59よりだいぶ直感的に操作できるでしょう。
またCLIPスイッチを入れることでさらなるコンプレッションと歪みを加えることができますが、その変化はあくまで微調整のような感じで、大きな変化ではありません。
これはパワーアンプ部での歪みのようなザラリとした質感の歪みで、ややサウンドも中域寄りへ変化します。
ダーティなサウンドを作る場合には結構使えるでしょう。
もちろんINPUT GAINを12時以前に設定すれば完全なクリーンサウンドを得ることもできます。
なおINPUT GAINの設定は音量にも影響を及ぼすため、併せてボリュームも調整が必要となります。

リードchでは59以上の歪み、ギターとの組み合わせによってはかなりのハイゲインサウンドを得ることができます。
こちらはINPUT GAINとLEAD GAINの組み合わせで歪み量を決定します。
クランチchをクリーンで使うためINPUT GAINを下げ目にしているとそこまでハイゲインにはできないので要注意です。ただしLEAD GAINだけでもJCM800程度の歪みは十分得ることができます。
リードchにもCLIPスイッチは効き、クランチchと同じような効果が得られます。しかし綺麗でスムーズな歪みを得るならCLIPスイッチは入れないほうが良いでしょう。
INPUT GAINとLEAD GAINを全開にするとEQ設定とギターにもよりますが、まるでJVMシリーズのようなハイゲインサウンドを楽しめます。
それでいながらノイズはかなり抑えられており、シングルコイルでも安心して使うことができます。

全体的なサウンド傾向はまさにマーシャルという感じで、中域にハリがありながらややトレブリーなサウンドです。ここらへんは59と共通した印象です。
しかしながら3バンド+プレゼンスのEQの効きが素晴らしく良く、VOX、Fender、Mesa/Boogie、Diezelといった様々なアンプのサウンドっぽく音作りできます。
例えばクランチchならBASSとMIDDLE下げ、TREBLE上げでVOX風、全部上げでFender風。
リードchならBASSとMIDDLE上げ、TREBLE下げでレクチ風、BASS全開MIDDLE下げTREBLE上げでDiezel風と言った感じです。
もちろんどれもあくまで「~風」ですし、根底にあるマーシャルらしさは健在です。
ただこれだけのサウンドバリエーションをEQ設定で再現できるほど効きが素晴らしいプリアンプは初めてかもしれません。
XoticなどのようなアクティブEQというわけでもないので、ここらへんはさすがFlying Teapotといったところでしょうか。
59のEQがそこまで効くタイプではなかったので、それを知っていると衝撃はかなり大きいです。

私が感じた各EQの役割は以下の通り。
・Presence
本来パワーアンプのコントロールで超高域を調整するものだが、JPでは音の硬さをコントロールする。下げることでルーズかつオープンなサウンド、上げることでソリッドでタイトなサウンドになる。
・BASS
100Hz以下のあたりのコントロール。3時位まではリニアに効く。下げ目でも音が弱々しくなることはなく、全体がスッキリしてくるので出力の高いハムバッカーなどなら下げてやったほうが良いかもしれない。3時以降は急激にブーストされるので多弦ギターやモダンハイゲインサウンドに向いている。
・MIDDLE
JPで一番良く効くコントロール。感覚としては中高域のあたり(900~1.5kHz?)を操作する感じ。ここの設定でどういったサウンドになるかが決定される印象。上げてもモコモコすることはないし、下げてもスカスカにならないあたり調整が上手い。
・TREBLE
音抜けや音の輪郭を調整する感じ。もともとのサウンド傾向がトレブリー気味なので、絞りきっても音抜けが悪くなることはない。逆にジャズっぽいスイートなサウンドを出すにはギター側のトーンを使ってやらないといけない。アンプのインプットに挿す場合は0を基準に設定するくらいでちょうどいい。

こんな感じでそれぞれの役割がはっきりしています。
そして前述の通り効きが良いので幅広い音作りができる一方、なかなか「これだ!」ってサウンドを作るのは難しいというのが本音です。
1時分でもノブを動かせばサウンドが大きく変わりますし、しかもそれぞれがお互いに干渉しあっているかのように複合的に変化していくので微調整が大変なんです。
59はどちらかというと「接続!ジャーン!良い音!」って感じでEQの効きが微妙だった分ストレートに良い音がバシッと出るタイプでしたから、59の感覚でJPを弄るとかなり手強く感じると思います。
もちろん全て12時設定で全く問題なく良い音が出るのですが、そこから自分好みのサウンドを探り出すとなかなかの迷宮です。下手するとゴミみたいな音になってしまいますし。
私自身も購入から1週間ですが、まだまだ可能性を探りきれていないと感じています。

電池駆動ができない、ON/OFFの切り替えができない、BOSS以上の大きさの筐体、音作りがとても難しい・・・と正直欠点も多々あります。
しかしそれを考慮したとしてもJPは十分に素晴らしいプリアンプペダルであると断言できます。
59譲りの音の速さや、アンプ実機と見紛うほどに広いダイナミクスと音域、そしてシルバージュビリーを彷彿とさせる見事な筐体デザイン・・・。
はっきり言ってこれは59を超える名機です。私個人の好みとしては59もなかなか捨てがたいものですが、一般的なユーザビリティや汎用性の高さなどでは明らかにJPの方に軍配が上がります。
アンプ実機を持ち運ぶのが馬鹿らしくなるほど、59やJPのサウンドは「それ」に迫ります。
プリアンプペダルの一つの決定版として、ぜひ一度お試しください。そしてその手強さと向き合うことの楽しさを実感してみてください。


以上、Flying TeapotのJubilee Preampでした。

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